概要
Uplifting Tranceは[Progressive Trance]や[Dream Trance]から発展したトランス音楽のスタイルです。このスタイルは、メロディをより強い重点を置き、基本的にビルドアップ(徐々に上げる)→ ブレイクダウン(落ち着き) → アンセム(象徴的な盛り上がり)という構成を主体とします。
また、[Hard Trance]の影響を受けたドラムがより際立つのも特徴です。
テンポは一般的に135〜142 BPMの範囲にあり、もう少し遅めの楽曲も存在します。
よく使用される音色として「supersaw」があります。これは1996年に発売されたRoland JP8000シンセサイザーで作られたサウンドで、Ferry Corsten(System F)による「Don’t Be Afraid (Of the Power)」や「Out of the Blue」などで初めて使用されました。
そしてうねる様なサウンドでEDMの代表格であるサイドチェインが非常によーく使われます。
このUplifting Tranceは構成が分かりやすいため、最も成功したトランスのサブジャンルの一つとなりました。
簡単に言ってしまえば、ずばりメロディックでユーフォリックなトランスの事です。
つまり旋律的で感情的な美しいメロディーを主体としたトランスです。
世界的なUplifting Tranceのムーブメントもあり1990年代〜2000年代前半までのトランスと言えばこのトランスを指し示していました。
なのでUplifting Tranceと言わなくともトランスで伝わっていましたが2000年代後半や2010年代以降では。
ヴォーカルも重点に置かれた総合的なジャンルである[Vocal Trance]
テクノ、ハウス寄りな[Progressive Trance]
レイブでサイケデリックな[Psy Trance]、[Progressive Psy Trance]
などといったスタイルも目立つようになり、トランスというこの一つの言葉が多くのファンに多様な意味を持つようになった為、トランスと言えばUplifting Tranceと言う風潮は時代と共に過ぎ去っていきました。
そもそもUplifting Tranceという言葉自体聞いたことがないという方もいるかも知れません。
若しくは同義語や類似ジャンルであるこれらの呼ばれ方の中に入っているかも↓
[Epic Trance]、[Energetic Trance]、[Anthem Trance]、[Emotional Trance]、[Euphoric Trance]、[Dutch Trance]
多すぎやろってね。
因みにDutch tranceは主要アーティストの多くがオランダ出身ということもあり、そう呼ばれていたそうです。
(Ferry Corsten、Tiësto、Armin van Buurenなど)
レジェンドすぎやろってね。
EDMについて調べていると必ずそこにオランダがあります。
勿論ここもそうです。
オランダがEDM大国と言われる所以も、このUplifting Tranceが大きな基盤となっています。
簡単な歴史
1990年代後半から2000年代初頭にかけて爆発的な人気を獲得したUplifting Tranceは、特にイギリスでは、Rank 1の「Airwave」や、Ferry Corstenによる「Barber’s Adagio for Strings」のリミックスなど、多くのUplifting Tranceの楽曲がシングルチャートのトップ10に入りました。
このジャンルの成長は、世界中をツアーし、プロデュースや自身のレーベル運営も行うスーパースターDJたち(Ferry Corsten、Tiësto、Armin van Buurenなど)の登場とも連動しています。
このジャンルの人気は[Vocal Trance]や[Euro Trance]など、よりメインストリーム寄りのスタイルの台頭にも影響を与えました。
2001年以降、市場やクラブでの供給過多による反発を受けながらも、Uplifting Tranceは「Sensation」や「Tomorrowland」などの大型フェスティバルで演奏され続ける人気ジャンルであり続けました。
また、インターネットの普及により、世界中の新たなファンを獲得する手助けにもなりました。特に、Armin van Buurenのラジオ番組(2001年からオランダのID&Tラジオで毎週放送)は約4000万人のリスナーを獲得し、他のトランス系ラジオ番組のひな型となりました。
影響されたジャンル
影響された特定のジャンルはあるもののヨーロッパの様々なジャンルのメロディアス系すべて影響されたトランスというイメージですね。
- Hard Trance
- Progressive Trance
- Dream Trance
- Euro Trance
主なアーティスト
Aly & Fila(アリィ&フィラ)は、エジプト出身のデュオアーティストで、Aly El Sayed Amr Fathalah(アリィ)とFadi Wassef Naguib(フィラ)によって構成されています。彼らは1999年に音楽制作を始め、2003年にドイツのレーベルEuphonic Recordsと契約し、国際的なキャリアをスタートさせ、2009年に自身のレーベル「Future Sound of Egypt Recordings(FSOE)」を設立し、トランス・シーンでの地位を確立しました。
音楽の特徴としてはエモーショナルでメロディックなUplifting Tranceを特徴とし、Armin van Buurenのラジオ番組『A State of Trance』でTune of the Yearに選ばれた楽曲も複数あります。代表的な曲には、「We Control the Sunlight」(2011年)、「Unbreakable」(2016年)、「Somebody Loves You」(2020年)、「For All Time」(2021年)などがあります 。
- We Control The Sunlight
Aly & Fila, Jwaydan
- Unbreakable
Aly & Fila, Roger Shah, Susana
- Somebody Loves You
Aly & Fila, Plumb
- For All Time
アーミン・ヴァンビューレン, Aly & FIla, Kazi Jay
- Perfect Love
Aly & Fila, Roger Shah, Abrina Thorpe
Darren Porter(ダレン・ポーター)は、イングランド北東部のシーハム出身のトランス・プロデューサー兼DJで、特にUplifting Tranceの分野で国際的に高い評価を得ています。
2000年代初頭、「Dave Pearce Bedroom Producer Competition」に参加し、楽曲「Termination」が評価され、Oceanstate Recordingsからリリースされました。これきっかけにトランス・プロデューサーとしてのデビューとなりました。
著名なレーベルであるArmada Music、Tytanium Recordings、Future Sound of Egypt(FSOE)などから楽曲をリリースしており、代表作には「The Potion」「Relentless」「Deep Blue」「To Feel Again」「Spellbound」「Neptune’s Siren」「The Calling」などがあります。
また、彼の楽曲はBeatportのトランスチャートで8回の1位を獲得し、FSOEの「Wonder of The Year」でも複数回上位にランクインしています。
- The Potion
Sean Tyas, Darren Porter
- Deep Blue
Darren Porter
- To Feel Again
Darren Porter
- Dream Like Do
DarrenPorter, Ana Criado
- Reach for the Stars
Darren Porter, XiJaro & Pitch
Ferry Tayle(フェリー・テイル、本名:Ludovic Meyer)は、フランス・ストラスブール出身のアーティストです。
2000年にフランス東部のクラブ「Le Colysée」でプロとしてのキャリアをスタートさせ、Cosmic GateやDavid Guettaなどと共演しました。
代表曲では、「Live For Tomorrow」「Nubia」「Napoleon」「Lozza」などがあり、特に「Nubia」と「The Wizard」はArmin van Buurenが主宰するラジオ番組『A State of Trance』のリスナー投票企画「Future Favorite」にて2014年のベストトランストラックの一つに選ばれました。
2015年、Ferry TayleはFSOE(Future Sound of Egypt)レーベルと契約し、FSOE 400ワールドツアーに参加しました。また、自身のレーベル「FSOE Fables」を設立し、Uplifting Tranceの新たな才能を発掘・支援しています。
- Nubia
Aly& Fila, Ferry Tayle
- Smile
Ferry Tayle
- Napoleon
Aly & Fila, Ferry Tayle
- Lozza
Ferry Tayle
- Fremont
Ferry Tayle, Elucidus
Solar Visionは、Uplifting Tranceを中心に活動するドイツのアーティストです。
感情的で壮大なメロディーを特徴とし、Future SequenceやYou Love Danceといったレーベルから数多くの楽曲をリリースしています。Airwalk3rとのコラボレーションでも知られ、近年注目を集めています。
代表曲では「Winter」、「The Power of Love」(Airwalk3rとのコラボレーション)
「Phoenix in the Night」、「Coming Home Again」、「The Sound of Missing You」などがあります。
Solar Visionは注目されるアーティストの一人であり、今後の活躍が期待されます
- Winter
Solar Vision, Airwalk3r
- The Power of Love
Solar Vision, Airwalk3r
- Phoenix in the Night
Solar Vision
- Coming Home Again
Solar Vision
- The Sound of Missing You
Solar Vision
ストリーミング
- Michael Sundgren
おすすめのチャンネル
大体ここを聴いとけばいいと言う所を挙げます。
このジャンルをYouTubeで聴いている方々はご存知かとは思いますが奮ってお邪魔してください。
- Aurora
- OM Project・OM Trance
それぞれ異なる国のチャンネルなので多様なトランスを聴くことが出来ると思います。
RazNitzanMusic(オランダ)Aurora(ノルウェー)OM Project・OM Trance(ロシア)
主なレーベル
1997年にオランダのブレダで設立された、様々なトランスや[Progressive Trance]を中心とする代表的なレコードレーベルです。
設立者はArny BinkとTijs Verwest(DJ Tiësto)で、Tiëstoの初期の成功とともにレーベルも急成長を遂げ、「Magik」や「In Search of Sunrise」シリーズは、トランスミュージックの世界的な普及に大きく貢献しました。
そして主なサブレーベルでは
In Trance We Trust ー 純粋なトランスサウンドを追求するシリーズ。Misja HelslootやArmin van Buurenなどが参加。
SongBird ー Tiëstoの「In Search of Sunrise」シリーズのリリース元として知られ、メロディックで感情豊かなトラックが特徴。
Magik Muzik ー 2001年に設立され、Tiëstoのヒット曲「Traffic」や「Love Comes Again」などがここからリリースしました。
Pure Trance ー Solarstoneが主宰するサブレーベルで、純粋なトランスサウンドを追求。
Coldharbour Recordings ー Markus Schulzが主宰するサブレーベルで、ディープでプログレッシブなトランスを中心に展開。
などなどです。
現在もUplifting Tranceにおいても重要な役割を果たしています。
Armada Musicは、2003年にオランダのアムステルダムで設立された、世界有数の独立系ダンスミュージックレーベルです。
設立者は、Armin van Buuren、Maykel Piron、David Lewisの3名で、レーベル名は彼らの名前の頭文字から取られています。
設立以来20年以上にわたり、50,000曲以上の楽曲をリリースし、月間10億回以上のストリーミング再生を記録しています。また、BBC Radio 1やSirius XMなどの主要ラジオ局での放送や、世界的な音楽チャートでの上位ランクインなど、業界内での影響力も非常に高いです。
そして主なサブレーベルは
Armind ー Armin van Buurenが主宰する様々なトランスレーベル。
A State of Trance ー 同名のラジオ番組に関連し、トランスミュージックを中心に展開。
Armada Captivating ー エネルギッシュなトランスやプログレッシブトラックをリリース。
Armada Chill ー チルアウトやダウンテンポの楽曲を提供。
Armada Electronic Elements ー ディープハウスやメロディックテクノを中心に展開。
Armada Subjekt ー ハウスミュージックに特化。
Who’s Afraid of 138?! ー 高速BPMのトランスに焦点を当てたレーベル。[Psytrance]が結構ある。
などがあります。
2005年に設立されたFlashover Recordingsは、Ferry Corstenが主宰するオランダ発のインディペンデント・レーベルです。当初はトランスミュージックを中心に展開していましたが、現在ではエレクトロハウスやプログレッシブハウスなど、幅広いEDMジャンルをカバーしています。
主なサブレーベルは
Flashover Trance ー トランスミュージックに特化。
Flashover Progressive House ー プログレッシブハウスを中心に展開。
Flashover Electro House ー エレクトロハウスに焦点を当てたレーベル。
Flashover House ー ハウスミュージック全般を取り扱う。
Boom Tsjak ー テクノやエクスペリメンタルなサウンドをリリース。
Stillpoint ー ネオクラシカルやアンビエントなど、落ち着いた音楽をリリース。
2019年にはArmada Musicとパートナーシップを提携。
Ferry Corstenのアルバム「Connect」は、ここFlashover Recordingsからのリリースでありながら、Armada Musicが独占的なライセンスを持つ形で配信されています。
ただのパートナーシップではないという事だと思います。
RazNitzanMusicはオランダを拠点とするレーベルです。
様々なレーベルブランドを所有しており、HP上では10個ものブランドがあります。多いわね?
中でも
・Amsterdam Trance Records(Vocal Trance, Uplifting Tranceなど)
・Raz Nitzan Music(Vocal Trance, Uplifting Tranceなど)
・Essentializm(Progressive Trance, Melodic Tranceなど)
などが有名です。
レーベルの運営はRaz Nitzanによって行われており、感情豊かなボーカルとメロディックなサウンドを特徴とするトラックが多くリリースされている他、多種多様なトランスが豊富な為、様々な需要に合わせてくれる魅力的なレーベルです。
もしyoutubeをメインに音楽を聴いているならこのレーベルがお勧めです。
Uplifting Tranceに関して言えばもうこのレーベルだけ知っていればいいと思います。
エジプト出身のアーティストであるAly & Filaによって設立されたエジプトを拠点とするレーベルです。
2006年にラジオ番組として始まり2009年からArmada Musicのサブレーベルとしてレーベルを設立し2016年からArmada Musicから独立したレーベルとしてスタートしました。
エジプトのギザのピラミッド前で行われた「FSOE 400」や「FSOE 800」などの記念イベントでかなり有名。
サブレーベルも豊富にあるので良ければチェックしてみて下さい。
FSOE Clandestine-ダークなトランスに特化
FSOE Fables-メロディックで感情的なトラックを中心
FSOE UV-Deep / Progressive Houseに特化
FSOE Parallels:-ハーモニー重視のProgressive Trance
Future Sequenceはドイツのレーベルで、主にトランスミュージックを中心に展開している音楽レーベルで、特にUplifting Tranceや[Vocal Trance]、[Melodic Trance]などのジャンルに焦点を当てています。
このレーベルは、2018年にSven Gruhnwald(Rocco)によって設立された「You Love Dance」で有名なドイツの音楽会社Planet Punk Music GmbHの一部門として運営されており、エネルギッシュで感情豊かなトラックを数多くリリースしています。
まだ歴史としては浅いもののここでリリースされる感情的でエネルギッシュなトラックは多くのトランスファンを虜にすることでしょう、というか私が個人的に好きなレーベルの一つです。
まとめ
調べてみると嘗ての程の人気ではなくなったものの未だに根強いファンが多くアーティストも多く存在するジャンルです。
そして現在ではジャンルの核となるエモーショナルでメロディックな要素を大切にしつつも、新たなサウンドやスタイルの進化を積極的に受け入れる傾向にあります。
Armin van Buurenは、2024年には21弾のミックスアルバムである「A State of Trance 202」をリリースする際のインタビューでは
「トランスミュージックは他のジャンルにも広く受け入れられるようになったので、最終候補リストを”たった” 42曲に絞り込むのは、とても楽しいことでもあり、とても難しいことでもある」
Armin van Buuren (アーミン・ヴァン・ビューレン) 、トランス初心者から通まで聴ける第21弾ミックス・シリーズ『A State of Trance 2024』をリリース
https://iflyer.tv/article/2024/05/17/asot-2024-21st-edition
と述べており、このミックスアルバムでは多様なトラックがリリースされていますしこれから
も様々な特徴を持ったUplifting Tranceがリリースされていくことでしょう。
レーベル項目が予定より多くなってしまいましたが、Ferry Corsten、Tiësto、Armin van Buurenの名を出されたら載せるしかありません。
でも折角なのでお邪魔しに行ってください。
https://en.wikipedia.org/wiki/Uplifting_trance
https://rateyourmusic.com/genre/uplifting-trance
https://en.wikipedia.org/wiki/Aly_%26_Fila








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